【RWC2011 in NZ⑨� align="left"/> ヘリコプターや飛行艇による遊覧ツアーでは雄大な火山景観と豊かな森林が一望できます。
湖上の食事付きクルーズツアーも人気だそうです。専用ボートに乗って天然マス釣りも有り。
湖畔に建つセント・フェイスス教会と湯煙立つ温泉、そしてモコイア島…。郷愁漂う光景です。
時刻は昼下がりの午後2時を回ったところ。もうお馴染みとなったロトルア観光案内所前のバス発着所では、新たにまみえる異国のサポーターがすでに集結していました。目指すはこちらと同じくネイピア。4年前にも見覚えのある「メープルリーフ」が映える国旗を手にする彼らはカナダサポーターです。同代表はすでに現地入りしてから1週間余り、18日(日曜日)のフランス戦は敗北を喫したものの移動日なく日本戦に余裕を持って臨むことができます。その対フランス戦が行われた地に再び舞い戻るカナダサポーターにしてみれば、これからバスで向かうネイピアは慣れ親しんだ街。客席のうち彼らが陣取る一角からは、まるで里帰りしているかのようなアットホームな雰囲気が伝わってきました。一方、3戦を終えて未勝利の日本代表� ��サポーターは、やはり21日のトンガ戦に敗れたショックを拭い切れていないからか、全体的に数が少ない上に心なしか元気がありません。何はとも有れ、バスはタウポ湖畔を経由して、ここから約143km先のネイピアを目指して南下していきます。 北島のほぼ中央に位置するタウポ湖を眺めながら、一行は目的地のネイピアに向かいます。
途中、目を遠くに移せば見えてくるのがユネスコ世界自然遺産・トンガリロ国立公園の山々。
陽が沈んで辺りは暗闇に包まれてきた中、ようやく終着点にたどり着きました。2日前の夜と打って変わって市街地は思いのほかにぎわっています。しかるに滞在先のドミトリー内に漂うのは張り詰めた空気…。それもそのはず、今晩の宿泊者のほとんどはチームカラーである"赤と黒"を身にまとったカナダサポーター。私に割り当てられた4人部屋も、内訳はカナダ人(豪州メルボルンに留学中の大学院生・カルガリー出身の大学生)と私を含む日本人それぞれ2人ずつでした。W杯開幕から1ヶ月弱、フランス・ニュージーランド・トンガといったプールA同組対戦国のサポーターと寝食ともにする機会が何度かありましたが、「お互いの健闘を祈るよ!」や「白熱した試合を期待しよう!」と声をかけられたように、実に和気あいあいとし� ��雰囲気でした(建前、あるいは格上としての余裕も多少はあるかもしれませんが…)。ところが、実力が拮抗するチームが相手となればライバル意識が一層強くなるからでしょうか。20年ぶりのベスト8進出を目標とする「メープルリーフ」ことカナダ代表の勝利に対する実直な思いにはいささか驚きました。球技に関して言えば、国技のアイスホッケーを除けばあまり普及していないカナダだけあって、彼らにとってみれば、メジャーな国際大会の舞台で唯一存在感を示せるのがラグビーなのかもしれません。いずれにしても日本代表にとって、明日の試合が従来の予測よりもハードな展開になるのは間違いなさそうです。 ■初夏を感じさせる陽光と青い空、そして独特の情緒漂う「アールデコ・シティー」の美しい街並み 外から窓越しに降りそそぐ光で目を覚ますと感じる日差しの心地よさ…。本日は初夏の訪れを感じさせる、文字どおり雲一つない快晴です。温暖な冬に加えて、清々しくからっとした夏…。四季を通じて過ごしやすい気候、そしてアールデコ調の美しい歴史的建造物が立ち並ぶこの町には毎年数多くの観光客が訪れます。また、国内でも有数の日照時間を誇るここホークスベイ地方は北島随一のワイン産地としても有名です。余談ですが、日本で知られているティッシュ・ペーパーのブランド「ネピア」が名付けられた由来は、林業及び製紙産業が盛んなネイピアの町名からきています。 昼頃になってようやく町の中心部もだいぶ賑わってきました。試合開始時間は夕方5時。それまでの間、海岸沿いのマリン・パレードや繁華街のエマーソン・ストリートを散策する事にしました。 《MAP》
海岸沿いの通りに面するネイピア観光案内所。モダンなデザインが施された噴水が印象的。
その斜め向かい側、ドーム型の屋根が特徴的な「ローン・スター」は町のランドマークです。
蒸気機関車のような姿の牽引車がマリン・パレード上に颯爽と登場。子供たちは大喜び!
南国ムードあふれる町の繁華街で行き交う人々。カフェはすでにサポーターで満席でした。
1931年にM8弱の大地震に見舞われたネイピア。看板に載る震災前と復興後の白黒写真。
震災によって町は壊滅的な被害を受けるも、アールデコ調の装飾様式による増築で一新。
当時流行していた建築デザインのアールデコスタイルも今となれば非常にレトロな印象。
繁華街から程近いテニソン・ストリート沿いを中心にアールデコ調の建物が集まっています。
道路を跨るように架けられた、町を訪れる日本・フランス・カナダ一行を歓迎する横断幕。
復興の象徴でもあるニュー・ネイピア・アーチ。アールデコ・シティーならではの造りです。
広場に設けられているのは創意工夫を凝らしたミニチュア版の"障害物ラグビー場"。
日本代表ジャージを身にまとった親子連れのサポーター。喜びの表情で見事ゴール!
深緑の渋みが効いた存在感抜群のクラシックカー。ネイピアには一層映えて見えます。
庭園脇の遊歩道に差し込む昼下がりの木漏れ日…。散歩するだけで心が安らぎます。
季節の花々で彩られた花壇の間に広がる、2色に刈り分けられた美しい縞模様の芝生。
爽やかな風に乗って左右に揺れ動く噴水。ビクトリア様式の庭園らしい洒落たデザイン。
ネイピア海岸からホーク湾越しに見えるのが、カツオドリの生息地・キッドナッパーズ岬。
カナダ国旗を背中にまとって散策するサポーター。赤いアフロヘアが可愛らしく見えます。
およそ3時間後に始まる"決戦"に向けて、ビール片手に士気を高めるカナダサポーター。
この日の日本代表は、滞在しているシーニック・ホテルの目前に広がるビーチでトレーニング。
見送りに来たサポーターは5人。対トンガ敗戦も影響して、JK始め代表面々張り詰めたムード。
■「赤」一色に染まったマクリーン・パークでついにJKジャパン見納め…、最後になるもKIWIに感謝 時刻は午後4時。キックオフまでおよそ1時間です。市内各地では実に多くの熱心な"ジャパン"サポーターに出会いました。本日の試合がラグビー初観戦となる女性観光客、大学生、家族連れ、そして日本代表に関してはことさら造詣が深いラグビーマッド…。ここは四季が日本とまるで正反対の南半球に位置する異国の地・ニュージーランド。しかしながらすれ違うたびに見知らぬ人でも皆笑顔であいさつを交わす微笑ましいシーンは、4年に1度のラグビーW杯ならではの光景でした。「応援がんばりましょう!」「ニッポン!ニッポン!…」しかし、こんなやり取りができるのも残念ながら今日まで。本戦がジョン・カーワンHC率いる日本代表にとっての今大会最終戦です。大会前には「最低でも2勝」という目標を掲げてNZに乗り込ん� �きたものの、結果は大方の予想を下回るプール戦3連敗。悲願の決勝トーナメント進出の可能性も断たれてしまいましたが、今宵に限っては私も「ブレイブ・ブロッサムズ」の一ファンとして精一杯応援したいと思います。 スタジアムにはすでに大勢の熱烈な日本サポーターが集結!会場は活気にあふれていました。
さて、試合会場のマクリーン・パークにはお互い「赤」一色に染まった日本とカナダ双方のサポーターに加え、地元住民やネイピア近隣からたくさんのラグビーファンの方々が観戦に訪れました。KIWI(ニュージーランド人の愛称)の専らの関心は、この試合が'87年第1回W杯「オールブラックス」メンバー同士の指揮官対決でもあるという事。現地の新聞記事によると、日本代表ジョン・カーワンHCとカナダ代表キアラン・クロウリーHCはともにオールブラックス時代から旧知の間柄で、どちらに軍配が上がるか注目が集まっているようです。 始めは閑散としていたスタンドもあっという間に満席となりました。いざ、待ちに待ったキックオフです!
試合開始から7分、日本はゴールライン手前のスクラムからトライを奪われ、カナダに先制を許します。インゴール中央に抜け出したのは、今カナダ代表で最も注目を集めるWTBファンデルメルヴァでした。前大会でも日本戦でトライを挙げるなど、相手防御に屈しない力強い走りが売りの28歳は序盤で早速持ち味を発揮。これに対して7点差を追う日本も3分後にすかさず反撃します。スクラムから2回のブレイクダウンを経て攻め上がり、HO堀江が右隅にトライ!SOアレジが難なくCGを決めて同点に追い付きます。その後しばらくは一進一退の攻防が続くものの迎えた前半24分、SOアレジのPGで逆転に成功。40分にはラインアウトから見事なサインプレーが決まり、最後はWTB遠藤がゴールポスト下にグラウンディングして前半を折り返しました(17対 10)。後半も一時はWTBマッケンジーのトライなどでカナダに追い上げられるものの、SOアレジによる2度のPGでリードを8点差に広げます。それでも懸命にハードワークするカナダは追い風も味方して徐々に攻勢に転じると、迎えた75分でした。キックオフ早々に先制トライを奪ったWTBファンデルメルヴァが再び日本の守備網をかき乱したのをきっかけに、SOモンローがインゴールを陥れて点差を3点に縮めます。そのSOモンローが試合終了間際の79分にPGを決めてついにスコアは23対23の同点となってしまいます。結局、勝ち越しを必死で試みる日本の健闘もむなしく、無情にもノーサイドのホイッスル…。この日は終始ブレイクダウンへの詰めが早く、守備陣もトンガ戦に比べてだいぶ安定していましたが…。まるで4年前のフランス大会での同じ� ��カナダ戦を再現したかのような、何とも言いがたい幕切れです。因縁の相手でもあるカナダに対し、またしてもW杯の舞台で引き分けた日本はついに未勝利(0勝3敗1分け)のまま、開催国ニュージーランドを去ることになりました。想像以上に早かったJKジャパンの終焉。試合終了後、スタジアム内には坂本九の名曲『上を向いて歩こう』がむなしく響き渡っていました。 夕焼けの太陽に照らされるマクリーン・パーク。ピッチ中央で最後の円陣を組む代表選手たち。
無念…。それでも常に日本代表に温かい声援を送って頂いたKIWIの皆さんには本当に感謝!
気が付けば暮れ落ちてたちまち暗くなってしまった上空。あの青空の爽快感はいずこに…。
■NZ到着後1ヶ月も満たずに帰国、思い起こすのは「桜」を応援する世界中のファンが抱いた期待 「意地の1勝」というプライドを賭けた最終戦も、最大8点だったリードを守り切れず引き分けに終わりました。同じ引き分けでも執念で追い付くことができた前大会とは意味合いが大きく異なるドロー劇…。おそらくテレビ中継を通じて観戦された皆さんの中には、同じような感想をお持ちの方も多かったはずです。 それでも今回の現地取材ツアーで思いも寄らず感銘を受けたのは、海外にも日本代表を応援しているラグビーファンが多数存在するという事。NZ首都ウェリントンで出会ったのは、ワラビーズをこよなく愛するオージーご夫妻。地元開催だった2003年オーストラリア大会をきっかけにジャパンのファンになったと当時を思い返していました。日本が豪州入りして真っ先に向かった直前合宿地では、縁あって大会運営ボランティアとして代表スタッフと深く交流したそうです。オークランド市内で足繁く通った飲食店では、会うたびにジャパンの各試合の戦いぶりについて語ってくる日本贔屓なサモア出身の男性店員と知り合いました。お気に入りの選手は、サモア代表WTBとしてW杯5大会連続出場の記録を持つ生きる伝説ブライアン・リマ、も� �一人はトップリーグですでにお馴染みのSOトゥシ・ピシだそうです。そして、同郷の元オールブラックス・JKが率いるジャパンに対して期待する現地のニュージーランド人…、程度は違えども世界中のラグビーファンが抱く「桜」に対する思いは実に十人十色でした。言われてみれば、このように日本人サポーター同士ならびに各国サポーターと交流する機会を与えてくれたのも、日本代表のW杯本大会出場があってこそ。今までのカーワン・ジャパンの戦いぶりが私たちに感動と勇気を与えてくれたかどうかは意見が分かれそうですが、最後は心からお疲れ様と言いたいです。外国人選手の起用を巡っては最後まで物議を醸すも、何より大会直前のパシフィック・ネーションズ杯でジャパンは初優勝を飾りました。言うまでもなく代表のた� ��に全力を尽くしてくれたジョン・カーワンHC…、この5年間は本当にありがとうございました。短い間ではありましたが、8月31日の"JKジャパン"NZ入り以来さまざまな場面で分かち合った期待と興奮、そしてあの懐かしい一体感は今後も忘れることはないでしょう。2015年イングランド大会ではきっと雪辱を果たしてくれることを信じ、これからも新しく誕生するラグビー日本代表をしっかりと見守っていきたいと思います。 W杯開幕前、NZオークランド空港に到着する日本代表を出迎えるのは元気な地元の小学生たち。
空港での到着セレモニー終了後、サインをねだられる菊谷主将とカーワンHC。2人とも大人気!
国内外問わず、各メディアのインタビューに対して真摯に応じるカーワンHC。日本語も実に流暢。
翌日オークランド市内中心部にて歓迎式典が催されました。開始前にも関わらずこの盛況ぶり!
独特な紋様が象られた門をくぐれば、待ち受けるのは先住民マオリ戦士による"威嚇"の舞・ハカ。
冒頭ではIRBラパセ会長に続き、カーワンHCが壇上にてスピーチ。母国でのW杯に感慨深い様子。
ステージにずらりと居並ぶ今大会代表メンバー。果たして4年後のW杯での顔ぶれやいかに!?
ファンの前ではいつも笑顔だったJK。いつの日かまた国際舞台で彼の勇姿が見られる事に期待!
<了>了>